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8/9(金) SDGs勉強会 SDGsと教育 開催報告・資料

SDGs勉強会 「持続可能な開発(SDGs)と教育の役割」
日時:2013年8月9日(金)18:00-20:00
会場:GEOC
主催:環境パートナーシップ会議
プログラム詳細: http://www.geoc.jp/event/relation/detail?id=99

リオ+20で、2015年以降の開発目標としてSDGs(持続可能な開発目標)の設置について合意されました。
今回のセミナーでは、国連で設置されたSDGsを議論するためのオープンワーキンググループ(OWP)での議論の現状についてIGES宮澤郁穂特任研究員より紹介いただき、開発目標の達成のために教育の果たしうる役割について、東京都市大学佐藤真久准教授に講演いただいたのちに、参加者を交えて、意見交換が行なわれました。

「SDGs に関する国際的議論に向けた課題と展望」
地球環境戦略研究機関(IGES)持続可能な社会のための政策統合領域研究員(兼)
東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻研究員
宮澤 郁穂氏
miyazawa

「ポスト2015国際開発アジェンダにおける教育の役割、
EFA(Education for All)とESD(Education for Sustainable
Development)のシナジーにむけて」
東京都市大学 環境学部 准教授 佐藤真久氏
satoh



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『SDGsに関する国際的議論に向けた課題と展望』
 ―IGES宮澤郁穂特任研究員ー

【SDGsとは】
リオ+20で、2015年以降の新たな開発目標としてSDGsの設置が合意された。
途上国の貧困削減を目標としてMDGsと異なり、途上国・先進国双方を対象とすること開発と環境を統合し、これまでMDGsに規定されていなかったエネルギーや防災などの課題も検討されるべき、などの議論がなされている。

【国連での議論の現状】
国連では、ポスト2015年開発目標について、現在ふたつの議論が進行している。
ひとつは、ポストMDGs(ミレニアム開発目標)に関するもの。
昨年からハイレベル・パネル会合が開催され、今年5月に報告書が提出された。
この報告を受け、国連事務総長報告書が夏に発表された。今年9月にはNYで特別イベントが開催される予定。

【SDGsのオープンワーキンググループ(OWG)について】
SDGsについては、今年1月にオープンワーキンググループ(OWG)が発足され、
3月からテーマ別のOWGが開催されている。
同時に、専門家グループ会合やテクニカルサポートチームによる議論もすすめられている。

現在は各テーマに関する有識者を招いて各国による意見交換を行なっている。
とはいえ内容はブレストが中心で、交渉そのものははじまっていない。
何を焦点とするかという点についての話し合いがメインで、目標設定に向けた実効的プロセスやステークホルダーとの連携の方法などは議論されていない。

この他、ハイレベル政治フォーラム、財務専門委員会などでの議論が平行して進んでいる。

【ハイレベルパネル報告書】
以下のキーとなるコンセプトが示された
・誰も取り残さない
・持続可能な開発を中核に据える
・雇用創出型の経済へ
・平和創造
・パートナーシップの推進

また、目標達成のためにはデータ収集も必要であり、その実現のためのメカニズム創造などが重要ポイントとして強調されている。

OWGの議論はMDGsの議論と統合が前提とされているとはいえ、現時点ではMDGsのハイレベル報告書の内容についての言及はなされていない。

【国連以外の場での議論】
3月にNature誌に掲載された論文には環境・開発の双方がカバーされるべきという観点からSDGsの議論が分析されている。

Global Compactも6月に報告書を発表。
開発、持続可能な開発、グリーンエコノミー、人間の安全保障など多くの概念が提唱されているが、例えば、日本やアジア諸国のもつ「足るを知る経済」といった考え方なども参考とされるべき。

各国の立場は、交渉が進んでいないため、特に変動はない。

ISAP2013という会合では、SDGs達成のためのセクター間の連携、目標設置プロセスへの包括的参加、各国政府の短期的ターゲット制定、各国の状況に配慮した検討の必要性などが議論された。

【環境省:Post2015プロジェクトについて】
今年度より、東京大蟹江教授によりPost2015プロジェクトが実施されている。
環境と開発を統合した持続可能な開発目標として、例えば水のリテラシー、肥満、などといったテーマをどう扱うかの検討がなされ、提案策定に向けた議論が進んでいる。

また、IISDによる以下サイトからPost2015についての最新情報の発信が行なわれている。http://post2015.iisd.org
メーリングリストに参加すれば情報が得られる。

【その他、質疑応答事項】
交渉について:
OWGの開催前には必ず市民社会組織との意見交換が開催されている
ただし、パブコメがかけられるかは不明。

提案の中身について:
既存の提案には、科学的根拠にもとづいたものが不足している。

OWGの議長は?:
 国連代表部の人物。ハンガリーとケニアの人。ハンガリーの担当者はオープン。意見交換の場も積極的に開催。
OWG参加者のレベルは?:
 まだ交渉も始まっていないので基本的には国連代表部。外務省や環境省から参加もあったが具体的な議論がまだ行なわれていないのが現状。
ハイレベル政治フォーラムの動きは?:
 議論はなされているが、拠出はどうするか、などの議論。

MDGs/SDGsの議論は?
現在はPostMDGsの議論が終わっている。SDGsの報告書が提出される2014年の国連総会以降にMDGsとSDGsの統合に向けた動きが本格化すると思われる。
日本政府はMDGs/SDGsの議論を担当する。

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「SDGsと教育の役割」
  ―佐藤真久氏―


教育をめぐる2つの国際議論:EFA(万人のための教育)、ESD(持続可能な開発のための教育)

ESDの10年:認知拡大や概念整理のために6年が費やされている。新たな概念ができると時間が費やされる。
現在の大きな世界的課題:環境配慮と社会的排除。これらを同時に考えるべき。

2013年2月、ダカールで教育に対する会合が開催。
これまでに議論が行なわれたものを統合し、ポスト2015年開発課題における教育の役割が議論された。
国連が実施したウェブ調査。開発目標の達成のために必要なものについて実施したウェブ調査(70万人が回答)では
教育が最優先事項という結果がでた。

雇用される能力
価値行動による解決能力などが言及されたが、SD(持続可能な開発)という言葉が出てこない。

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環境と持続可能な開発についての指摘を行なったのは、120人ほどの参加者のうちわずかうち3人ほど。
あとは人権ベースのアプローチについての主張がメインだった。

Post MDGs関係者の中には、教育は人権という認識を持っている人がいる。
「持続可能な開発の基礎」という考えは、(佐藤氏が)指摘をしたことによりよりようやく入った。

教育に関して、最近注目されているのは「クオリティ・エデュケーション」

MDGsの目標2、3の改善に大きな貢献をしたが、基礎教育に関しては停滞している。
就学率向上を重視したため、学びの成果や卒業後について、などが議論されていない。

量と質(先生、教材、学習環境について)
「社会的排除問題と地球環境問題を同時に取り扱うことが大切」。

開発型知性(自分のポテンシャルをどう開き、人の権利として学び、それを社会の中でいかす)
制御型知性(地球資源制約の中で、どのように節度ある生活を多ない、自分たちの行動を制御せねばならないか)
このふたつを重視することが大切。


DESD(ESDの10年)最終年を迎えるにあたって:
世界人権宣言、こどもの権利条約、ダカール行動フレームワークなど、人権をフォーカス。
日本は環境教育というフレームワークから抜けられていない。
2006年ボン宣言、地球憲章の視点など。

気候変動、災害リスク削減、持続可能な生産と消費といった先進国・途上国の共通課題を
設置していくことが、2015年以降の目標設定に重要な役割を果たす。

主な意見:
・Global Education First Initiative
・Quality Education + Learning:
 Learning(学習):個人の出力性。社会にどう役立てるかというコンピテンスという視点が加えられている。
 従来の「教育」という議論では、先生、教材、学習環境という視点、インプット重視という視点が注目されていた。
・文化というものが位置づけられていないのではないか。

教育さえ受けられない人たちがいる、一方で、教育によってつぶされているという状態、両方の側面が存在する。
こういった議論の場で日本のプレゼンスが弱い。国際会議への参加者も少ない。
タテワリの議論を結びつける必要がある。
リオ+20の議論ではジェフリー・サックスがSDGs推奨型であったがOne-size-fit-all的な
(すべてをひとつの物差しにあてはめようとする)主張であり、研究者の間では懸念されている。
多くの国連のアジェンダが2014年/2015年で終わることになっており、今は重要な局面。

*今後にむけて学びの場や意見交換の場を定期的に設けたいと、参加者からコメントがあった。